納税するという市民に、サラ金まがいの取立てで追いうちとは

 役所が怖くて夜も眠れません。
     私たち家族の手に負えません。助けてください
 
 
 「役所が怖くて、夜も眠れません。電話が鳴ると恐ろしくて。どうすればいいかわかりません。
もう私たち家族の手に負えません。助けてください。まるく治めてください」


 携帯に相談が入りました。70歳を越える女性からでした。
ご主人が病気入院し出費がかさみ、家族を支える息子さんが滞納した市県民税を分割納付していました。
息子さんは、月1万円の納付約束を履行してきましたが、担当職員からもう少し額を増やしてほしいと促され
倍額の2万円の納付を伝えました。
ところが、職員は、2万円は少なすぎるとして認めず、役所に出向くよう求めました。


 電話口に出たお母さんに対して「出向かないと息子さんが困ったことになりますよ」と職員。
ショックで、ショックで、まるで脅迫されているようで、
市役所がこんなことを言うのかと信じられない思いがしたといいます。
これまでの二人の担当職員さんは優しい人たちだったのに、今度の職員は私らが暮らしていけるかどうかより
自分の成績を上げる方が大事なんやと思いました。
息子は思わず電話で「それは首をつれということか」とまで言ったといいます。


 「払わないとはいっていません。払います。納税は市民の義務だと思っています。
でも、役所に出向けといわれても、息子は会社を休むと皆勤手当2万円が飛んでしまいます。
私は足が悪くとてもいけません」
「2万円の納付書を送ってもらえば、これまでのように毎月払います。なぜ、それでは駄目なのですか」……と。


 「納税するといってる市民に対して、サラ金まがいの取立てで追いうちをかけるとは何事か!」―
私は腹が立って、腹が立って。
即、税務課に連絡。
税務課が自宅に出向きました。
(はじめからそうすればいいのに。「ありがとうございます」と2万円の納付書をもって!)


 お母さんは一生懸命、自分の思いと時系列のやりとりを話しました。
さぞかし、勇気のいることだったでしょう。
ところが、担当職員の説明がさっぱりわからない。
何が事実で、どう解決したいのか。意味不明。ともかく出向けの硬直状態。
これでは市民は途方にくれるでしょう。


 わかったことは、ともかく、職員に見えてるのは数字だけということ。
滞納額をいかに早くゼロにしてしまうかだけ。
どんな気持ちでこの家族と向き合っていたのか…そんな言葉はついぞ聞けなかった。
人を見てないからです。
今回のような事態は起るべくして起こった。
市民の信頼が得られるはずもない。
未熟な職員が、市民の生存権と生活権を握る権限をもつ恐ろしさ。
身の毛のよだつ思いがした。


 病気や失業、営業不振などで、滞納という事態に陥った市民が、日々の暮らしを営みながら、
計画的に分割納付して健全な生活をとりもどす―。
税務課の仕事は、市民の公僕として、この過程を見守り支援することでもあると私は思う。
こんな姿勢では、滞納者の中に多重債務者がいても到底、発見は無理でしょう。


 実は、この担当職員は、いつも笑顔で挨拶をしてくれる若手職員で、私は期待を寄せていたくらいでした。
まさか、です。 でも、当日の本人の「説明」は、明らかに、市民の公僕としての基本姿勢を問われるものでした。言葉の端々にポロポロそれが出てくる。私よりお母さんの感覚の方が鋭かった…。


 最後に、課長、課長補佐、本人が謝罪しました。
お母さんは「これからは脅すような物言いはやめてほしい」と注文。


 この職員の背景には、「臨戸徴収は極力避ける」「分割納付は状況調査をした上で適正額(最大限の額)を設定」という税務課の姿勢があります。
今回のことは氷山の一角かもしれない。
重い問題提起でした。
9月の決算議会が目前ですが、議会も数字だけで論じていては役割が果たせない。