鮫川村「顔の見える村がいい!」

視察報告③
 鮫川村は世帯数1,120戸、人口4,500人の村です。日本の村の原風景、郷愁を感じる村です。村民も職員さんも、素朴で、且つ、自治意識の高さを感じました。我が村、我が役場に寄せる村民の思いがきわめて熱い土地柄ゆえでしょうか。7つの行政区があり、行政連絡にとどまらず実際に行政自治を行い、区長は議員より権威があるそうです。村は、区民の声を吸い上げている行政区の理解協力なしに立ち行かない。納税組合があり、なんと納税完納50年です!(鳥羽市の財政課長が聞いたらさぞかし羨ましがるでしょうね〜)
 さて、私が鮫川村のどこを学びたかったのか…。鮫川村は、東北初といわれる合併協議会を4町村で立ち上げ、合併ありきで進んでいました。しかし、「合併して果たして自分たちの暮らしが維持できるのか」村民は危機感を持ち、村中が大議論となります。長野県栄村村長(自立選択)の講演会などを開き、みなが学びあい、住民投票で7:3で「自立」を選択したのです。「顔の見える村」を皆が望んだ、暮らし優先、お金はなくても工夫すればなんとかなる、と村民も職員も腹を括ったのだといいます。新村長のもと、財政逼迫の中で財政再建をめざし軌道に乗せています。振り返って、我が鳥羽市は、トップが合併を望みましたが、離島や海岸線にお金がかかるとの理由で近隣町村は合併拒否、その結果、ようやく、市の財政状況の厳しさを認識し、再建策が緒についたばかりです。問題はその方向です。市民参加で決定されたものではないため、市民サービス低下にならないのか、危惧する声があります。先進地では、どのように財政再建をすすめているのか、どんな工夫があるのか、その知恵を学びたいと思ったのです。
 ■さて、まず、びっくりの出来事。これも行革の一環でしょう。議会事務局室に案内されると、ベテランとおぼしき男性職員がお茶の接待。どの自治体でも、ほとんど例外なく来客へのお茶出しは女性です。「鮫川はすごい、男女平等なんだわ〜」と感心していると、説明してくださる企画調整室長さんが「まもなく事務局長が参ります」。登場したのが、なんと、お茶くみの男性ではありませんか。実は事務局長さんだったのです。議会事務局は局長1名、議会の時は総務課が応援に入ります。議会だけでなく、どの課にも、職員は数えるほどしかいません。締まってますネ!人件費は、村長20%カットをはじめ特別職の給料減額、職員の管理職手当、通勤手当、住宅手当、超過勤務手当を全額カットなどして、平成16年度は、7,600万円(人件費の9,4%)をカット。事務事業を見直し5,000万円カット。議会も「保育料を値上げしないように」と提案し、自ら議員報酬を減額したそうです。えらい!村の維持発展という目的を共有しているからこそできることですね。
 ■村の自立の切り札は、農業を村の基本産業に据える、「豆で達者な村づくり」です。企画課、農林課、住民課(健康づくり)がプロジェクトチームを組み軌道に乗せました。特産品である大豆・エゴマを農家に作ってもらう、それを村が買い上げる。東京農業大学に有能な職員を派遣し、豆腐、豆乳、きなこ、味噌、飴、油……を習得し販売しています。その名も「手・まめ・館」をオープン。写真をご覧下さい。玉城町の「あぐり」と良く似たイメージです。豆製品やそれを生かしたヘルシー食堂(豆腐ハンバーグや豆乳スープ…)、白菜やいちご、干し柿…が並びます。給食にも活用、村内だけでなく村外からも客が増えています。農業は、利益が地元地域に再投資される率の高い産業なのだそうです。大豆・エゴマ栽培、特産品への加工や、農村景観・自然の豊かさを活かすグリーンツーリズムを地域住民をはじめ、学識経験者や都市住民の意見を反映しながら地域活性化、雇用創出、都市との交流につなげる取り組みを始めています。鮫川村のきな粉は天下一品と大学の先生から折り紙つきだとか。いわき市生協や東京の外食産業とも提携。「きな粉茶」がおいしい!今後は農家レストラン農家民宿も、民間でと夢が広がっています。
 ■それまでお年寄りは自分の畑でつくった白菜や大根を、近所も作っているのであげる所がなかったけど、今は客に喜ばれ、小遣いにもなるので、めきめき元気に。大豆の健康効果も大きく、高血圧、女性のガン、骨粗しょう症予防になり、なんと、医療費が2,000万円も削減できたのだそうです。(高齢者の医療費の約1割に当たります)すごいですね。(これは、国保担当の健康課長が聞いたら羨ましがるでしょうね〜) 
鳥羽市は農業政策が弱いです。加茂地区のエネルギーはパワフルなのにもったいないですよね。農業を活性化すれば、鳥羽市に元気を与えてくれるはずなのです。皆で議論を。そして、一歩を踏み出さなくては。皆さんのお考え聞かせて下さい。
昨日の文化庁さんのお話ではないけれど、「目的と手段」って大事です。まちづくりも同じです。目的がしっかりしていないと、手段の議論が難しい。たとえば、人件費の問題もそうです。鳥羽市を持続可能なまちにするためにどうするか、それがはっきりすれば、職員の適正数や雇用形態についても、おのずとものさしができるはずです。

<「手・まめ・館」>
大豆や野菜を作っている方の写真と名前を貼り出してします。みんな、いい顔してます!