鳥羽小現校舎保存活用問題の質問を紹介します

  「歴史的文化財的価値があり貴重なもの」「市民の署名を重く受けとめている」と市長表明。 
   「議会の尊重、市民議論を見守り判断」と答弁。
      しかし、「保存活用方法を探りたい」言外にそんな思いを滲ませた…。
        「議会が保存との結論を出せば、すぐ検討に入りる」と市長、各課が答弁。

  

今、鳥羽小現校舎問題の一般質問を掲載する「幸子だより」が仕上がったところです。この問題については「戸上さんはどう考えてるの?」こんな声もかかります。そこで、ちょっと長くなりますが、紹介させていただきます。
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 鳥羽小校舎保存問題の質問は、中身をどう構成するか、ベースをどこに置くのか、とても難しかった…。切り口も多くあり、かといって、深みにはまりこんでしまっても困るし、なるべく、シンプルにポジティブに。校舎活用は楽しいことであるはずなのです。
  まず、市長は、「保存請願」が議会審議中であるので、議会尊重を理由に、自らの結論表明はしないと想定できました。私が、行政の責任を示せ、耐震診断せよ、と迫っても、それは変わらないでしょう。
  それで、結局、肝心なのは、議会議論と思い至ったのです。質問は、同僚議員と情報を共有し考えあうトーンにしようと考えました。市民署名の重みに対して、議会として、あまりにも情報不足(勉強不足)というか、受身というか…ちょっと気がかりだったので…。
 市長は、「歴史的文化財的価値があり貴重なもの」「市民の署名を重く受けとめている」と表明。やっぱり、判断の基本は、議会と市民議論の尊重と答弁しました。しかし、同時に、「保存活用方法を探りたい」言外にそんな思いを滲ませました。「議会が保存との結論を出せば、すぐ検討に入りる」と市長、各課が答弁しました。
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  <質問と答弁>
 鳥羽小学校現校舎の活用について市長の基本見解を伺います。
議会開催の前日、議長あてに7505名にも達する保存活用を求める請願署名が提出されました。これほどの数はかつてありません。議会は市民世論を真摯に受け止め、審議する責任があります。
運動主体である鳥羽小同窓会は今後さらに9000人をめざし、インターネットで10万人の全国署名を展開するとしています。鳥羽小があの滋賀県豊郷小学校校舎問題のように発展する状況が出てきています。一方で市民の間には、現校舎は古いのに、お金をかけるのはもったいないのではないかとの意見もあります。
  行政財産である現校舎の今後については、当然、市が責任を負っています。仮に、そのまま、放置されるようなことがあれば、付近住民の皆さんのご心配も起きます。この問題ついて市の基本見解がいま求められています。そこで次の点についてお聞きします。
1、校舎の建築的文化財的価値について、市長はどのように認識されていますか。
2、校舎保存活用を求める署名が市内外から寄せられています。市長の見解はいかがですか。
3、国交省のホームページの「観光」を開くと、トップページに、「地域いきいき観光まちづくり2008」があります。全国で33自治体が紹介され、その中に鳥羽市が入っています。また、「100選」にも選ばれています。観光立国担当の冬柴国交大臣は、平成19年に閣議決定された「観光立国推進基本計画」のテーマにもとづいて、全国各地で観光客の滞在時間を延ばす取り組みと、魅力の掘りおこしが行われている。その取り組みを広く紹介することとした」と語っています。鳥羽の取り組みに折り紙がついたと私は大変嬉しい思いをしました。鳥羽にいるとなかなかわからないのですが、鳥羽市の歴史的文化的な価値が全国的にも非常に注目されていると、私、自身、改めて痛感しました。
鳥羽市観光基本計画」がこうしたとりくみのベースになっています。同計画書は鳥羽小学校の有効活用をエコミュージアム、すなわち、地域の自然や文化、生活を含めた環境を、持続可能な方法で研究・保存・展示・活用していくといことですが、その中に位置づけています。市長は同計画の実行をどのようにはかっていくお考えですか。以上、3点お答えください。

【市長答弁】「校舎の建築的文化財的価値について大変貴重なものであると考えている」「署名について重く受止めている」


議会の結論がでれば
     観光アクションプログラムで検討していきたい 担当課長答弁

【農水商工観光課長答弁】
 鳥羽小現校舎の有効活用は、みなとまち文学館、広野邸などと一帯となったエコミュージアム形成として「観光基本計画」の位置づけられている。資料館、観光拠点、ボランティアのウォーキング企画の際の休憩所など委員から有効活用の意見が出たものです。議会の結論が出れば、基本計画をうけたアクションプログラムにおいて、活用方法等について検討していきたい。


【再質問】市長の答弁を聞き、建築的文化財的価値はあるが、保存して活用するかどうかについては、市民と議会の議論をもう少し見守りたい、との意向と理解しました。
 そこで私は2つの基本点を提起したいと思います。提起に対する市長と教育長のご見解を伺います。
 
 まず第1点は、現校舎がどれほどの価値を持つのか、学術的専門家の診断結果を市民と議会に示す必要性です。
 市民の間には、古くて危なそうだとの印象もあります。一方では見かけより頑丈で由緒あるものなのだ、と意見もあります。大事なのは客観的事実でどうかです。
 私自身は、近鉄が事務局の近畿分科会が主催した「伊勢、二見、鳥羽の近代建築を探る臨地講座」で、近代建築史が専門の川島教授の講義、 同窓会が主催したNP0伊勢河崎まちづくり衆理事長の一級建築士、高橋先生のお話、そして、教育委員会が主催した構造学が専門の西沢教授の講演会に参加して勉強しました。保存活用か解体かを議論するうえで大変参考になりました。普通、素人のわたしたちが見学しただけではわからない校舎の値打ち、意義を発見する思いでした。ぜひ、多くの市民のみなさんが知ってほしいと思いましたし、議員なら不可欠な講演であるとも思いました。
 しかし、講演記録がありません。教育委員会が主催した西沢講演はじめ、これらの専門家講演を文書化してすぐにも全議員に届ける、図書館や支所など主だったところへ置いて、市民のだれでも閲覧できるようにする、希望する市民には実費で配布する、教委のホームページにアップする、それぐらいのことは教育長、問題がここまで発展している今、すぐにもすべきではありませんか。まずこうした客観データの市民への提供の必要性、教育長はどのように考えているのか、ご答弁ください。
 

  次に2点目ですが、市民の間にあるさまざまな不安と疑問に、市として整理し、きちんと答える義務と責任があるということです。鳥羽小は市の建物であり、市の行政財産ですから当然のことです。この点が非常に弱いというか、ほとんど答えてきておりません。廃校校舎の問題は、鳥羽市だけでなく、全国共通の課題です。どこでも、行政が責任をもって市民の意見反映をはかり、方向を見いだしています。鳥羽市の遅れが際立っています。
 2つの問題について、市長にお訪ねします。
市民第1の心配はお金の問題です。鳥羽の財政をさらに圧迫する無駄な支出になるのではないか、との意見です。
 多額の財政出動をしているところもあれば、節約して活用しているところも全国にあります。そもそも文科省自体が古い校舎を有効活用すべし、との姿勢です。活用できるかどうか客観的検討を加えずに、解体してしまうところはないですが、そうしようとしたのがあの豊郷小学校です。これは全国的にも大問題になりました。文化的価値のわからない町長の姿勢で町全体がイメージダウンし、訂正したのは記憶に新しいところです。
  いまのエコ意識のもとでは有効活用は当たり前になっている取組みですが、文科省は「廃校リニュアル50選」としてまとめ、奨励しています。
これをみると、平成4年から13年度までに、廃校になった小中高2125校のうち8割を超える1748校がさまざまに活用されています。利用は地域と住民の要望に即して、さまざまに工夫しています。事業の財源つまり「金の問題」も、公的資金がほとんどですが、一部を教育委員会の分庁舎として活用し低コスト化をはかるなど、予算の身の丈にあった活用方法と維持管理をしています。観光客の新しい呼び水になった京都や神戸などの例も多くあります。要は知恵次第ということです。
  

 第2に危険校舎ではないか、との心配です。教委が主催した、全国で百を超す文化財改修を手がけている構造学の第一人者、西沢先生は頑丈さについて太鼓判を押しました。同時に、行政がきちんとした耐震診断を実施することが大事だともおっしゃていました。
解体するのなら診断は不要との意見もありますが、丈夫で使えるものを診断しないで破壊したとなると、これまた行政財産喪失で違法行為の処罰対象になります。
 ですからこれは教委の問題ですがすべての前提として、なによりもまず耐震診断の実施が必要です。教育委員会がちゃんとしてこなかったために、市民の間に、危険校舎だ、いやそうではない、など印象論が広がってしまったのです。心配されている皆さんには、その不手際をまず教育委員会は陳謝しなければなりません。その上で、耐震診断の実施が必要です。
お金の問題では、身の丈にあった知恵の出し方、危険校舎問題では耐震診断の実施、この私の提案について市長のご見解をお聞かせください。
懸案の問題に対して、教委はもっと情熱を持って積極的に取り組まねばなりません。現状では、あなたがたはやるべき職責を果たしておりません。
 この点での市長のリーダーシップもぜひ発揮していただきたい。教委を督励していただきたい、いかがでしょうか。


「歴史的文化的価値についてを市民に知らせる。
              市民と議会へ提供したい」市長答弁

【市長答弁】歴史的文化的価値についてを市民に知らせる。西沢教授の講演記録を私も全部読んだ。市民と議会へ提供したい。限られた予算の中で議会の議論と市民要望を十分勘案して判断したい。


【再質問】
 充実したデータ公開をお願いしておきます。
 市長が貴重なものと認め、市民署名を重くうけとめ、また、観光戦略にも位置づけたものですから、基本になる耐震診断は、議会の議論を受けて対応していただきたい。
  
 財政面からも慎重に考えていくとのことですが、莫大な財政が必要なわけではありません。問題整理が必要です。当面必要なことは雨漏り防止、耐震診断、補強実施。あとは鳥羽市の身の丈にあった活用。市民の納得の得る財政出動額にする。その中で、将来的に、建物の一部を民間やNPOなどに運営委託するケースも出てくるのではないでしょうか。
  

 登録有形文化財については、観光とまちづくりの面からだけでなく、財政面からの検討が必要です。国、県に直接聞きました。文化庁のパンフの通りで、非常に条件が緩やか。ご承知の通り、保存活用に必要な修理の設計監理費の2分の1の国補助があります。県補助もありますので10分の6補助です。
 それに加えて、タイムリーなことに、今年度から、県が登録有形文化財に対して、事業費の1割を補助する制度をスタートさせることになりました。「いかそう、文化財活用提案事業」です。県は文化力で「三重を元気に」、文化による地域づくりに力を入れています。私も先日松坂市で開催された「なぜ、今、文化力なのか」シンポで学んできましたが、この文化財活用提案事業もその一環で、県の姿勢を示すものです。
 市長の見解を伺って質問を終わります。


【答弁】
議論の集約が必要と思う。戸上議員の提案も含めて考えてまいりたい。