国保健全運営の質疑をしました


私の主張−−
◆23年度は一般会計繰入カット分を戻して増税なし
◆24年度以降は値上げを最少負担に抑える
◆セ−フティ−ネットで払えない滞納者を守る
    


<※私の「幸子だより」19日号から>
 師走も押し迫ってきました。皆さん、お風邪など引いてませんか。我が家は鬼の霍乱か、風邪をひきつつの12月議会です。いつも屋外や室内でも暖房は最低限の暮らしなのに、市役所の暖房による空気乾燥で咽喉をやられてしまうのです。なかなかしつこい風邪です。読者の皆さん、ご自愛くださいね。


 さて、今週は国保増税議案の質疑をご紹介します。吟味の不充分な議案の上程が市民を不安に陥れています。2万円もの増税は市民の暮らしを直撃し、必死に納税している世帯を新たな滞納者層へと追い込むことは火をみるより明らかです。それが、本当の国保の健全運営なのか。私の提案も含め質疑しました。


議案第62号、国民健康保険税の税率改正について質疑します。
■まず条例改正の税額を確認しておきます。国保運営協議会に提出した標準世帯のモデルケースがあります。夫婦と子供二人で年間課税所得184万円の場合で、国保世帯の平均額となっています。この標準世帯の場合の今の税額、値上げ後の税額、増税額は1人当たりと世帯あたり、それぞれいくらですか。
【市民課長答弁】1人当り7万25円から9万1475円。2万1450円増。世帯あたり28万100円から36万5900円。8万5800円の増です。


■モデルケース世帯の場合、国保税のほかに、固定資産税、所得税、県民税、市民税、国民年金保険料あわせていくら払っていますか。
【市民課長答弁】20万3538円です。

国保税が36万5800円、それ以外の租税公課が20万3538円。合計で56万9138円になります。税金だけで60万円です。では、課税所得が184万円の場合の総収入額はどれだけですか。
【市民課長答弁】336万円です。

■月額平均すれば月収28万円です。モデルケースは19歳と16歳の子供だから食べざかり、育ち盛りです。食費もいるし教育費もいるでしょう。食費や娯楽をぎりぎり切り詰めてやっと暮らしを維持している。それが市民の現状です。こんな家族にさらに8万円も増税をかぶせる。それがこの議案です。国保税がいかに重いか。今回の条例改正で、健保と公務員の共済と比較してどうなるのか、聞きます。所得に占める、保険税の割合を示したのが、負担率です。このモデルケースの所得の場合、年収が同じ336万円であった場合の、中小企業サラリーマンの協会けんぽの、負担率はどれだけですか。
【市民課長】8.3%です。
■市職員などの地方公務員共済はどうですか
【市民課長答弁】8.8%です。
■それでは改正前、現在の国保の負担率はどうですか。
【市民課長】12.9%です。
■現行でも3割高。では議案の値上げの場合の負担率はどこまで増えますか。
【市民課長】16.8%です。


国保の家庭は一般サラリーマンや公務員の2倍もの負担を強いるのがこの議案だということです。税務課長にお聞きします。21年度の国保税の滞納世帯数どれだけですか。それは課税世帯数に対して何パーセントになっていますか。
【市民課長答弁】856世帯で、20,27%です。


■2割を超えています。国保税は滞納すると最終的には保険証を取り上げられお医者にもかかれない状況になる税金です。それでもこれだけの滞納があるのです。各世帯の負担がいかに重いかを物語っています。鳥羽市は平成18年度国保税を値下げしました。取り過ぎた国保税が10億円あってそれを納税者に返しました。市民課長、5カ年間の値下げ額の総額はどれだけになりますか。
【市民課長】6億7千万円。後期高齢者医療制度への移動がなかったとした場合で4億円です。


■納税者世帯は助かりました。それぞれの家庭では消費に回した分もあるし、ほかの租税公課に充てた分もあります。税務課長に聞きします。市民税の収納率ですが、現年と滞納を合わせた合計の率の17年度と21年度それぞれどれだけになっていますか。
【市民課長】17年度が71,6%、21年度が81.8%です。
■10%増になっています。税務課の取り組みとあいまって納税者が滞納分に回すことができた。これも収納率アップの要因の一つです。今、全国で問題になっているのは、高すぎる国保税が家計を圧迫して、払いたくても払えない世帯が激増しているという実態です。滞納が増え、国保会計が赤字になり、増税すると滞納が増えるという負のスパイラルになっています。市民課長、保険税が払えないため短期被保険証を余儀なくされてる世帯数、保険証を取り上げられ資格証を発行されている世帯数、現在、どれだけか。
【市民課長】短期被保険証は223世帯、資格証は122世帯です。


■345世帯8,2%です。今回の条例改正がどんな影響をもたらすか、火を見るより明らかではありませんか。これまで懸命に納税し、なんとか、保険証を受け取っていた国保世帯が滞納に追い込まれるではありませんか。次に一般会計からの繰出金について聞きます。市町村は一般会計から繰り入れなければならないとした法律がありますか。
【市民課長】国保法第72条です。


■繰り入れは義務になっています。では何を対象にどれだけ繰り入れるのか。厚労省の事務連絡文書があります。一般会計から繰り出すべき対象の項目を列挙した一覧表が添付されています。そこで市民課長にお聞きします。厚労省の示した繰出金対象として国保運営協議会委員の報酬、一般職員の本俸から手当て、共催や負担金の一切の金額、臨時職員の賃金、委託料、旅費、需用費費、使用料手数料、備品購入費などおよそ必要とする経費のいっさいを含んでいますが間違いはありませんか。
【市民課長】そうです。


■一般会計からの繰り出しというと「母屋がおかゆをすすっているのに離れはすき焼きを食べている」などと言う人もいますが、とんでもありません。繰出しは法律できちんと決まっています。ところが鳥羽市は法で定めた繰出金をカットしています。市民課長、カットは何年度から始まり21年度までのカット総額はいくらか。
【市民課長】17年度から始まり総額1億5900万円です。


■そこで副市長に聞きます。あなたが繰出し金カットを始めましたが、鳥羽市国保会計への繰り出し金。他市の事例も参考にしたはずですが、他市の繰りいれ状況、当然知っていましたね。どうですか。
【副市長】知りませんでした。
■調べもしないで法で定めた繰り入れをカットしました。副市長21年度の1人あたり繰入額は県内で最低が鳥羽市ではありませんか。
【副市長】そうです。
■県内14市の国保税被保険者1人当たり繰出し金を調べてもらいました。21年度の鳥羽市の繰入金はどれだけですか。
【市民課長】1万5345円です。
■ではいちばん多いのはどの市でいくらですか。
【市民課長】亀山市では3万5559円でございます。


■鳥羽より2万円も多い。財政の苦しい隣の志摩市でさえ2万5258円、尾鷲市は2万5461円。鳥羽より1万円も多いのです。カットの具体的事実について聞きます。市民課長、出産育児一時金です。平成17年度の場合、法で決まっている本来の繰入金に対して、財政当局からどれだけの率を掛けてカットされましたか。
【市民課長】0、451でございます
■本来は1、出すとなっているのです。この年でいえば1246万円です。それを559万円しか繰り入れなかった。687万円もカットした。ピンはねではありませんか。出産育児一時金はほんの一例にすぎない。国保繰り出し金のカット分、市も反省して1億6千万円のカット分のうち22年度は1400万円だけ返しました。副市長、残りのカット分はいつ返しますか。
【副市長】23年、24年で返します。


■きちんと戻してもらいたい。いま聞いたのは国保法第72条が定めた法定繰入金です。今、全国で国保世帯の負担を軽減するために、法定外の繰り入れをプラスしている自治体があります。市民課長、県内の市で法定外繰り入れをしているのはどの市ですか。
【市民課長】四日市、伊勢、松阪、鈴鹿名張、亀山、いなべ、志摩市です
四日市は6億、鈴鹿は5億、隣の志摩市は1億円、法定外で繰り入れて国保世帯への負担をくいとめています。14市のうち8市ですよ。南伊勢町でさえ1億円繰り入れています。鳥羽市はしない。しないどころか法定繰入金すらカットする。そうした金を集めて基金に積み立てる。2億5千万円も貯金に回す。副市長流にいえば、国保世帯にお粥をすすらせ、母屋がすき焼きを食べているではありませんか。


■市民課長に国保運営協議会についてお聞きします。
国民健康保険法の11条は「重要事項を審議するため、運協を置く」と定めています。ですから今回の値上げについても運協で審議してもらったのでしょう。市民に重大な負担を強いる大幅値上げ案です。運協委員のみなさんが十分審議できる資料を提出するのは行政の最低限の責務です。繰入金の県内自治体の実態の資料、運協の会長に聞くと知らなかった、と言っていますが、出さなかったのですか。
【市民課長】出しておりません。


■そんな基礎的資料もなかったのですか。では国保の世帯にどれだけの負担を新たにかけるのか、それは健保や公務員共済と比べてどうかの資料はどうですか。出しましたか。
【市民課長】出しておりません。
■これもなし。では、国保世帯の実態がどうかも審議の大事なデータです。値上げしても払えるのかどうか。収納率にもかかわります。滞納の実態、資格証明書の発行数、延滞金を払っている人の数、そういった資料は出して議論してもらったでしょうね。
【市民課長】出しておりません。
■それでは「重要事項を審議する」という国保法の定めに沿わないではありませんか。必要不可欠の資料を全部出して、吟味を重ねていただく、運協自体をもう一度やり直す必要があるのではありませんか。
副市長、あなたは運協に終始出席していましたが、十分だという認識ですか。どうですか。
【副市長】運協をもう一度開くようお願い致します。


■そこで本当に1人2万円、4人家族の標準世帯で8万5千円もの条例改正が必要なのか。運協へ提出した資料では21年度の決算結果は歳入が32億6200万円、歳出は31億600万円、差し引き1億5600万円の黒字とありますがその通りですか。
【市民課長】その通りです。
■一般会計からの繰入金1869万円をカットしてもこれだけの黒字だったのです。次に22年度は歳入31億5800万円、歳出31億700万円で5100万円の黒字。これも間違いありませんね。
【市民課長】その通りです。
■22年度は繰り出し金のカットなしで、過去のカット分1400万円だけ返してもらったと計算してあります。それで5100万の黒字です。それが23年度から突然、2億円以上の赤字になる。要因として所得減による保険税の減収、繰り入れる基金が底をついた、反面、医療費が増大するなどの理由をあげています。市民課長、23年度の不足額はいくらと試算していますか。
【1億9123万円です】
■その試算に一般会計に持って行かれた、もともと国保会計の繰入金1億6千万円、22年度の1400万円返してもらっているから残金、1億4600万円は計上してありますか。
【市民課長】入っておりません。


■入っていないんですよ。予測赤字1億9千万、財政から返してもらう1億4600万円に22年度の黒字の繰越金5100万円。合計すれば1億9700万円。500万円、黒字になるではありませんか。来年度、1人2万円もの値上はまったく必要ありません。しかし、24年度は違います。24年度の予測赤字額はどれだけですか。
【市民課長】2億1900万円です。
■2億円不足します。繰入金の返済もなくなります。再来年度以降は値上げはやむをえなくなるでしょう。法定外繰入金も亀山市なみにとは言いません。せめて志摩市尾鷲市なみにする。これで1人1万円カバーできます。そうすれば値上げ幅は1万円以下で済みます。平成17年度の値下げ前の水準ということですから、市民の理解も得られるのではないでしょうか。このあたりを検討したのですか。
【市民課長】そこまではしてありません。


■値上げもやむ得ない、そういう場合もそれはあります。しかし、吟味を重ね値上げ幅を最小限に抑え、国保世帯への説明責任を果たす必要があります。鳥羽市の保険料は14市の中で2番目に低い、だから値上げしてもよいとなどと、まことしやかな宣伝がある。広報とばでも市の保険料と県内保険料の表を出した。そこで聞くが保険料の算定は費用額から割り出すます。リンクします。どうですか。
【市民課長】そうでございます。


鳥羽市の21年度の一人当たり費用額は低い方から数えて県内14市で2番目なんです。14市で一番保険税が低いのは熊野市で、6万7247円です。しかし、費用額は鳥羽より1万8500円も高く28万8797円かかっていますよ。伊勢市の保険税は確かに鳥羽より3万円高く10万3千円です。しかし、費用額も鳥羽より3万700円高い30万900円。費用がかかっていないのだから保険料が安くて当たり前ではありませんか。どうですか
【市民課長】そうなると思います。


■私の16年間の議員生活で、一挙に1人2万円一世帯が8万5千円もの増税案が提出されてのは初めてのことです。この増税案を知った市民の中に衝撃が走っています。悲鳴が上がっています。今回の増税案がいかに理不尽なものか、この質疑で明らかにしました。
市民の命と健康に直結する国保の、こんな議案は認めるわけにはいきません。22年度の決算を見極め、24年度以降をどうするのか、改めて詳細な資料も用意した運協で協議し、行政も新たなセーフティネット施策を検討して、市民に明らかにすることを求めて、私の質疑を終わります。